アラビア「ゴム」と表記された薬品瓶
「アラビアゴム漿」と大きく表示された薬品瓶。
(現代の私達には、「ガム」という方が馴染みがありますが)
ラベルの反対側に『10gあたりゴム0.5を含む』との表示有。
明治時代。
An old medicine jar labeled as “Gum Arabic”.
Meiji Period
It is not sticky when dried and quickly became viscous with a little water, so it should be used as a suitable tablets base in old period, such as the late Edo and Meiji era.
アラビアゴムを、何に用いたのか?
21世紀の今日でも、アラビアゴム(ガム)は、食品(ガムシロップやアイスクリームなど)、水彩絵具の固着剤、医薬品のコーティング剤として利用価値の高いものです。
おそらく、明治時代、あるいは、それ以前から、アラビアゴムは、丸薬の固着剤として用いられたものだと推察しています。
ただし、オールドクリニックに遺るこの薬品瓶には、「アラビアゴム”漿”」と記されています。【漿】とはどういう意味だったのか? このような形状の瓶に保管するのだから、粉末だったと思うのですが、瓶には何も残っていないので詳しいことは分かりません。
シーボルドもアラビアゴムを用いて丸薬を処方した
これは、2013年10月に愛媛県歴史文化博物館で開催された特別展「三瀬諸淵~シーボルト最後の門人」の展示品を私が写真撮影したものです。シーボルトの処方箋をこの目で見ることが出来た貴重な機会でした。
その中に、今日の主役である「アラビアゴム」がありました(上から三段目です)。
彼も、出島においてアラビアゴムで丸薬を作って、患者さんの治療に用いていたのです。
博物館の注釈は、下記のように提示されていました。
硝石 1ドラム(3.89g)
甘草膏 2ドラム(7.78g)
アラビアゴム 半ドラム(1.94g)
砂糖 1ドラム(3.89g)
丸薬60個となし、寄る2個ずつ服用
-フォン・シーボルト(自署)-
遠い国から運ばれてきたアラビアゴム
薬品瓶の性状やラベルの墨書などを見ると、これは初代千太郎が用意したものであることは明らかです。
アラビアゴムは、インド、アフリカ、オーストラリアなどが原産。今から120年以上昔、遠く海外で採取され生成されたアラビアゴムが日本に輸入され、西洋医学の治療薬として、この奥大和の地で患者さんの健康のために用いられたのです。なんだか、とても悠然たる人や時間の流れを感じてしまいます。
大事に大事に管理保管していたと思われます。
この瓶が120年後の今日、まだここに遺っていて私達に語り掛けてくれる。
瓶の言葉を、手に取って感じることができる私達は、幸せです。
2013年の特別展「三瀬諸淵~シーボルト最後の門人」にてシーボルトの処方箋をこの目で見ても、凡人の私には「見た」ということしか記憶に残っていません。
しかし、先人が用いた「アラビアゴムの薬品瓶」を見ると、シーボルトの処方箋を見た記憶さえ、一段と輝きを増しますし、山添村で行われたであろう明治時代の医療現場が、具体的にイメージできます。
オールドクリニックに保管されるこれらの明治時代の物品は、私達に「有機的な記憶や思考」を植え付けてくれます。
是非、皆様にここを楽しんでください。
☆☆☆
今日は、少しロマンチックにふらふらと綴ってしまいました。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
このブログは、野村医院オールドクリニックに遺る数々の医療器具や薬品、医療に関連した物品を、さまざまな形で紹介しております。また、時間のある時に訪ねてくださいましたら、幸いです。
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