はじめに
分校は、本校化! いや、廃校なのか?
令和7年3月議会は、これが争点となる。
野村栄作村長が、「分校を本校化するか、廃校にするか、令和7年3月末までに結論を出す」と言っているからである。
村長に、民意を届け、英断を迫るべく、「分校の本校化と存続を望む会」は1月~2月に署名活動を展開した。
また、その途中、2月16日に、「山添分校のこれから」と称した講演会を開催した。
今回は、従来にない視点に立って、山添分校を改めて見てみた。
話題提供者に、村民の福山茂光氏、伊賀市議会議員の森中氏、そして、在校生の父兄であるフォーブス氏を招いて、村の内外からの評価、そして、生徒の保護者からの声を、参加者に聴いていただくことに務めた。
本稿では、この講演会を振り返る。
2月16日、講演会「山添分校のこれから」
2月16日(日曜)午後2時、山添村役場3階の大会議室に、村の内外から80人超の人たちが集まり、熱心に分校の価値、今後について話しあった。
分校は、村民が認識している以上に、貴重な存在であることを、改めて知る機会になった。
福山茂光氏 【分校への想い】
福山氏は、
「伊賀城和定住自立圏構想をしっかり役割を捉えて、人口減・少子高齢化の中で、医療や防災、交通、福祉、教育などで連帯していく必要性」を強調された。村民の一人として分校に温かい目でとらえた氏の講演内容は、下に掲載した奈良新聞にその要旨が紹介されているので、詳細は割愛する。
伊賀市議会議員 森中秀哲氏 【「地域の学びの多様性」と山添分校】要旨
①伊賀から見た分校の価値
令和6年度の在校生32名のうち、伊賀市から13名(名張市からは14名)が通学している。伊賀市からの生徒の卒業中学校は、崇広6名、緑が丘・城東・島ヶ原各1名、青山2名、つまり、市内全域から、山添分校に通っている。
昼間定時制、少人数で学び、4年目には実習を通じて、社会で生きて行く力を育む教育が実践されているため、伊賀で中学生に進路相談する立場の人たちも、分校を勧めている。同じような教育施設が、伊賀や名張にはない。
伊賀市には「学校になじめない、いじめにあっている、集団生活が困難」な中学生は、一学年に10人以上、「日本語支援が必要」な中学生は、一学年あたり90人前後いると推算される。山添分校は、そのような生徒たちを、伊賀と名張併せて毎年6,7人受け入れている。その数は、決して少なくない。今後は、山添分校の需要は、これからも増え続けるのではないか。
②将来を見据えた、分校の五つのポイント
・伊賀城和定住自立圏にある教育機関であること
それぞれの市町村が、圏内で、役割を分担していくのがルール。①でみてきたように、山添村が、生徒たちを受け入れて育む役割を担ってもらっている。これからもその役割に期待したい。
・小規模校であること
小規模校の良さが、実は、見直されつつある。小さいが故に淘汰されるという時代ではないのではないか。
・オーガニック農業の教育に取り組んでいる
伊賀・名張地区に、もはや、農業を学ぶ公立高等学校は存在しない。分校は、オーガニック農業の教育も始めた。
さらに、今春、オーガニックビレッジ宣言まで予定しているのだから、このユニークな教育は、発展していくのではないか。
・生徒に「生きる力」を育んでいること
分校では、生徒たちは社会に出て行く術を学んでいる。多くの者が、就職・進学して社会に役立つよう成長している。分校の果たしている役割は、実はすごく大きい。
・コミュニティの核となる可能性がある
本来、学校はそうであるべきなのだが、さらに地域との繋がりを強めて、社会人が学べる施設でもあってほしい。
山添村の人々が、将来のことを考え、分校の価値を正しく評価して、より良い選択をされるように願っています。
在校生の保護者 フォーブス八重子氏 【保護者として思うこと】要旨
★以下は、御講演を終えたフォーブスさんに、改めて、お気持ちを数百字程度にまとめ直してもらった原稿です。
現在、娘が山添分校に通学しております。御縁をいただきました学校の存続について、難しい状況にあると知り、憂慮しています。
分校の存続を願う大きな理由としましては、県内でも唯一の“規模”の学校であることです。娘は集団での学習や活動が得意ではないため、小規模特認校へと編入し、卒業しました。
彼女は、困りごとにも寄り添う細やかな支援により、少しずつ成長を重ね、自信を高めました。また、豊かな自然の中で、地域の皆様方から「郷土学」を教わり、知識や体験とともに、様々な世代の方と交流することで、社会的な学びも多く得られたように思っています。
入学した山添分校の「オーガニックスクール」は、とても素晴らしい取り組みだと感じています。高校生や参加者を中心に、村の内外まで広く山添村の魅力を伝える多世代交流の場として役割を担えるよう、更なる発展を期待します。
村外から通学する分校生や、その家族は、「つながり人口」として、村の活性化にも貢献する存在となり得る貴重な人材です。山添の誇る自然や文化、歴史などを学べる独自の教育活動を展開することで、地域への想いを深め、後々の就業や定住に繋いでいくことも可能なのではないかと思います。
地域社会の一翼として、子供たちと交流する特別活動や、地域課題に大人と共に取り組むなど、村民の皆様とのかかわりの中で分校生を育むことも村立学校の意義かと存じます。
山添分校は、中規模校や通信制の学校とは全く異なる存在価値を有するため、他の高校では代替えすることが難しいように思います。地域の生涯学習を含めた大切な学び舎として末永く守られることを心より願っております。
講演会の効果
主催者が目指したように、分校を内から、そして外から、村外から見つめ直すことができた講演会であった。
自分たちには気づかないことを、周囲の人に教えてもらうことは、よくあること。
分校は、どれだけ、貴重な存在か。
意図したからではなかったかもしれないが、分校は、定住自立圏のなかで、すでに立派に機能を発揮しているのである。
それを知ることができた講演会だった。
閉会後、聴講くださった参加者の方々に、分校の本校化と存続を望む会が取り組んでいる署名を、改めて募った。
会場では、奈良新聞をはじめとする新聞社(伊賀・名張の報道陣も含む)の取材にも応じた。
翌日以降、いくつもの新聞報道があった。

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