はじめに
2025年(令和7年)3月この2年半の間、山添村の最大の問題「分校を本校化するか?廃校か?」が、いよいよ大詰めを迎えつつある。
「山添村長が、本年度末までに、3月議会にて、分校をどうするか結論を出す。」と明言しているからである。
「本校化する」とも「廃校する」とも、彼はまだ一言も口にはしていないが、昨年後半から、分校の存続は厳しいという主旨の発言を、公的な場でもしばしば口にしているので、本校化や存続には後ろ向きであることは、明らかである。
本稿では、3月末に、予想通りに村長が「廃校という結論」を出すに至った場合、現時点で決断することに関する“問題点”を整理しておきたい。
分校の設置は、議会の専権事項
分校(正式には、山添村立奈良県立山辺高等学校山添分校)の設置は、山添村の設置条例によって規定されている。
つまり、山添分校を廃校にするには、この設置条例の変更を要する。
当然のことながら、議会に諮らなければならない事項であるが、分校問題が顕性化してから、一貫して、議会では半数以上の議員が、廃校・閉校に反対の意を示し続けている。
現村政は、折衝や交渉という試みをしたことはない。少なくとも私はそれを経験していない。
議会の反対が予想されるにもかかわらず、村長や教育長の意向で、分校を廃校にすることは、はたして許されることだろうか?
条例を無視して、方針を決めるのは
思い出さないか?
前村政が、水道条例などを無視して、馬尻山でのメガソーラー開発計画を、なかば容認して県の方針を仰いでしまったこと、これによって、計画の下流の人々は、賛成反対で分断されてしまったこと、結局、それが誘因になって村長は次の選挙に出馬せずに引退したこと、メガソーラー開発を目論んだ企業が現地事務所を撤退するまで5年間を要したこと、、、
条例の大切さ、条例を守る大切さを、現村長が忘れていないことを願う。
条例だけではない、クリアすべき項目
このブログで何度も書いてきているが、分校問題を、しっかりした議論を経て結論を導こうとしているとは、まだ言えない。
未来創生計画は、「村立移管(本校化)」を謳っている
山添村の「憲法」とも称される“未来創生計画”は、まさに村政の最上位計画である。これには、村の様々な課題や目標が掲げられている。
この計画の策定と変更は、村長の諮問に応じ調査審議する「やまぞえ未来創生計画会議」が設置されている。
同会議が毎年開催され、項目ごとに見直されて改訂される。
分校に関する記述は、2022年(令和4年)8月に下記のように改訂されている。
山添村の山辺高等学校山添分校の村立移管と教育の充実・保育園および小・中学校のあり方など、教育機関全体を見据えながら、山辺高等学校山添分校を昼間定時制高校として村立移管をおこなうことを視野に教育内容の更なる充実を図る。
2022年以降改訂していないのだから、村政はこの方針を踏襲していると捉えるべきである。
村の近未来の方針を規定する最重要案「未来創生計画」を、議論して書き直すこともせずに、廃校への舵を切ることは許されるのか?
村長の諮問機関「山添分校の在り方検討委員会」が「本校化・存続を」と答申している
2023年・令和5年、5月31日、村長の諮問機関として「山添分校の在り方検討委員会」(以後、「在り方検討委員会」と略す)が、発足した。前年2022年に、村政が突然「分校を廃校にする」という旨を、議会の全員協議会や、山添分校の教職員室、同窓会や後援会役員などで宣言したことから、一気に問題が噴出し混乱した。
これを収束するために、答申案をまとめようとしたのであろう。委員には、公募に応募した村民3名や、廃校しか選択肢はないとしていた池住教育長も含まれていた。構成メンバーは、“ALL山添”という陣容であった。
同年9月、約3か月余の議論の結果、この委員会は「本校化すべき・存続すべき」という答申案をに出した。
村長はそれを受け取った(それを、どのように評価したかは、公的な場では示されていない)。
村長の諮問機関、ALL山添で構成された在り方検討委員会が答申した「本校化・存続」の結論を、どうして蔑ろにすることが出来るのか?
民度が問われる -行政的役割、文化、教育面から-
オーガニックを推進したいのか? 衰退させたいのか?
多くの人が、すでに指摘していることだが、
山添村は、3月22日に「オーガニックビレッジ宣言」をすることになっている。
昨年から、その準備に取り掛かっていた。
分校の授業にも、有機農業を取り入れた「オーガニックスクール」を始めた。
これも、オーガニックビレッジ宣言と呼応したものである。
山添村役場のHP「村長のへや」を覗いてみてほしい(下図はその部分)。
ここにも、オーガニックスクールを分校の教育に据えてやっていくという村長の熱意が感じられるページである。

SDGsを視野に農水省が進める有機農業を拡大していくオーガニックの潮流のなかに、
山添村は歩を進めたわけである。
これから、オーガニックを推進しようと宣言する村が、その前年からオーガニックスクールを開始した自分たちの高等学校を自ら廃校・閉校にするのか?
これは、どう考えても、矛盾に満ちている。
まさに、迷走。
そんなことすれば、山添村のオーガニック宣言など、まさに「お飾り」になってしまう。
3月22日の宣言の式典は、こんなことでは、「色あせた」「しらけた」ものになってしまうのではないか!
危惧するのは、私だけではあるまい。
分校は、すでに定住自立圏のなかで一定の役割を果たしている
伊賀城和定住自立圏にある教育機関として、村内だけでなく、伊賀市や名張市の子供たちの教育の一翼を担っている。
彼等にとって、伊賀市や名張市に適切な施設がないから、これはとても重要なことです。
簡単な解説ですが、2月16日の、伊賀市議会議員・森中氏の講演内容を読んでみて下さい。
山添村は、分校を擁して周辺の市町村としっかり付き合っていくことができるのではないでしょうか?
そんな分校を手放すなんて、「悪手」としか言えません。

緊急の課題は、「マンパワー不足」 -私の推測-
オーガニックスクールが順調に始まり、それなりの手ごたえも感じていたであろう村長が、
なぜ、2024年(令和6年)9月頃から、手のひらを返したように、「廃校・閉校」に舵を切ることになったのか?
それは、役場が抱える「職員の欠乏」問題が、より深刻化しているからと、私は推察する。
この数年、途中退職する職員が、目立って増えてきた。
当初、村の幹部は、「仕事のできない職員は、人生の早期に自分に相応しい職場を見つける方が良い」という意味の発言を堂々と公言していた。
しかし、辞める職員が多くて、職員の数が、絶対的に不足するようになって、
村長も青ざめているのではないか。
それが、現実の問題となってきたのが、昨年後半ということかもしれない。
役場の機能のうち、
医療・福祉、住民サービス、環境衛生、農業などの基本的な機能を守るために、
文化やスポーツ、芸術、観光などの部分が、徐々に切り捨てられている。
教育に関しては、小学校・中学校教育は、まだ守られているが、山添分校(高等学校)の本校化は、現在の役場のマンパワーでは、もう扱えないというのが、村長の本音なのではないか?
教育長も、「今の教育委員会には、できません」という発言が目立つ。
「教育委員会の事務局には、最低限のことしかさせられない、人が少なくて困っている」という意味である。
しかし、これは言い訳に過ぎないのではないか?
やらねばならないことを、あらゆる手段を講じて、対応するのが、現場の長の責務であるはずだ。
それにしても、なぜこれほどまでに職員が辞職するのか?
その理由を検討し、この問題を解決することこそ、村長が最も取り組まねばならない事項だ。
今の村政が、この職員減少問題に、対応していけるのか?
多くの人は、固唾をのんで見守っている。
3月末の決定は、困難・不可能! やはり選挙を経る必要
3月末までに結論を出すという村長の姿勢には、無理があることを、ここまで述べて来た。
3月末まで結論を出さなければならない理由は、
彼等が、令和8年度には入学試験を止めたいということに尽きる。
そのためには、令和6年度末にそのように明言しなければ、手続きが間に合わないからであろう。
県の教育委員会(県教)に、村長も教育長も、顔が立たなくなるからであろう。
他の理由がない、見つからない。
ならば、条例を守らなくて良いのか?
ならば、未来創生計画や、分校あり方委員会の答申案を、蔑ろにして良いのか?
少なくとも、村長も私達村議会議員も、誰一人として、
先の選挙にて、分校問題を公約に掲げた者はいない。
今年8月末に公示される次の同日選挙を経て、
村民の信任を得て、もう一度議論すべきではないか?
令和8年度の入学試験中止という村長と教育長の目論見は、断念してもらいたい。
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今回は、テーマから外れるので、
私の「分校理想論」は、あえて封印したことをお断りします。

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